雨の日はバスが混む。
女子中学生の隣に腰を下ろし、
その小さな頭越しに窓の外のつややかな緑を眺める。
きれいに生きた者が勝ちなんだ、
ふとそう思う。
そのちょっと前、
雨の中、停留所にて、バスを待っていた。
乗車するバスが近づいてきたのを見て、
早く乗り込めそうな場所へ移動した。わたしの様子を見てほかの待ち人たちも場所を移っていた。
だがバスはわたしの予想を外れてずいぶん前方に停まった。
移動しなければ、一番乗りできたのに。そしたら一人掛けの席にも座れたのに。
悔しくなる。しかし、バスに早く乗り込みたいと、席を我先に確保したいからと、どこか必死だった自分の意地汚さに気づき、はっとする。
反省したわたしはほかのバス待ち人たちが先に乗り込めるよう、わざとゆっくりめに歩き、最後に乗車した。
それでもまだ悔しかった。そんな小さなことでも、やたら気をつかって疲れた日の帰り道など、やっぱり堪える。
ただ、雨は、気持ちをするすると鎮静させてくれることがある。
ふっと静かになった心で、濡れてよりあざやかな木々を眺めていたら、
きれいに生きた者が勝ちなんだ、
ということばが浮かんだ。
なるべく純粋で、きれいな心を保ち生きていれば変なことは起こりにくくなるし、いい風が吹く。
そんなことを、思った。
バスを降りるときは運転手さんに「ありがとうございました」と言うことにしている。
きのうは
「こちらこそ~」と返されて、
その意外な返事と口調のやわらかさにすこしおどろいた。
とっさにその言葉が出るなんて、きっとやさしいひとだ。
そしてそういうきれいなやさしさこそが、こまめな掃き掃除のように
あらゆる空間をうつくしく保つのだとおもう。