「女というのは魂につけることのできる最も高貴な名前である」
エックハルト説教集というのを読んでいたら、こう言っていたんだよ、エックハルトが。
呑み込むと、
生み出す。
わたしは子どものころから、車は運転しないと固く誓っていた。
車は恐ろしい、ちいさな、無力なひとびとをひき殺し、ばらばらにし、伸ばし、ぼよぼよにし、あるいは生殺しにし、火だるまにし、欠陥させ、沈黙させる。
きょう教習所で、赤い車の中で、
わたしはボロボロ泣いた。
こわいんだ、最終試験で40キロ出すなんで無理だよ。坂道なんて登れない。
指導員に連れられて、ロビーに行って、教頭が出てきて、「落ち着いてください」と言われた。とっくに泣き止んでいるのに。静かに泣いていたのに。
わたしはね、
月を見ながら歩くのが好き。
月とわたしは
一直線に結ばれてる。
それだけでいいと思ってしまう。
お父さん、
教習所辞めていい?
世界に伝えることがあるとしたら、
あるとしたら、
わたしは月を見ながら歩く夜の豊かさを。
目の前の優しい人だけに、伝えたい。