くら寿司で母と夕食をとり、
母はバスで、
わたしは歩いて帰った。
夜に歩くのが前から好きなんだ。
道路工事中の作業服のおじさんが、無線か何かで遠くの仲間に話している。
「歩行者が……」
ほこうしゃ。
それを聞いてなんだかしっくりきた。
わたしを言い表すのにふさわしい言葉だと思ったから。
歩行者。
そのプレーンな響き。
通行人
だとすこし寂しい感じ。
歩行者。
思えばずっと歩いてきた。
死へと歩行している、というと大げさか。
「お仕事何されてるんですか?」
「歩行してます」
気に入った。