「決して、自分ではない誰かになろうとしないこと。
自分の像を歪めてまで、ほしい愛があることはわかります。知っています。けれど、私はそんなつらい道を、誰にも選んでほしくありません。
そして、もし愛を失ったとしても、それは決してあなたの選んだ服やメイクが間違っていたからではないし、ましてやあなたが美しくなかったからではないということを、覚えておいてほしいのです。」
雨宮まみ著『女の子よ銃を取れ』
まいにち6時間30分、美術館で座ってぼうっと考えている。
監視の仕事を始めたんです。(厳密には監視員さんは別にいて、わたしは作品解説員。作品についての質問に答えたり、お客さんたちにナビツアーしたり。まあでもそんなことするのは月に数回で、基本監視業務)
いくらお客さんが来ないからって本を読んだりスマホいじったり居眠りするのはもちろんoutだから(まあうっかりちょろっと寝ちゃうことあるけど……)
ただただ考えごと。
(最初の頃、あんまり暇なので日本国憲法の前文のアンチョコをしのばせて、お客さんがいないときとかこっそり読んで憶えようとしたこともあったが一日で挫折)
ただただ考えごと。
考えごとをするのに、美術館の高い天井と、しずかな空気と変なアートと、閉館のアナウンスは、なかなかよい助っ人になってくれる。
6時間30分の頭の中。
◎決まった時間に「閉館」になる建物が好きだ。夜が来て目を閉じるみたいで。
◎原爆ドームはほんとうに、残しておいてよかった。「傷ついた」ってことをたいせつに、尊厳をもって保存するというスタイル。それは「心の傷」についても同じことが言えるのかもしれない。
◎自分よ、あなたは自分に対して、「毒母」になっていたのではないか?
◎ネットのなかの「女叩き」を必要以上に目で追ってしまうのはなぜだろう?
◎「ネットの「女叩き」ひどいのです」と男性たちに言うと、みなさんそれについては目にしたことはあっても、「そんなの一部の男がやってることだよ」「もっとほかのことに目を向けなよ」という反応。なぜ一瞬でも「あれはひどいよね」とこちらに寄り添ってくれないのか。
◎とあるネットナンパ師の男性の結果報告ブログ、レイプに盗撮、未成年との性行為をがんがん匂わせかなりどうかしてるが(まあ匂わせるどころかタイトルが「泥酔レイプ!」」だったりする……)それよりまったく筆者の人物像がでてこない文章が不気味。筆者の人物像どころか、一切の「男」が排除されている。美女のエロい写真は毎回でてくるのに、男にはモザイクかかってる。いやーでも会ってみたらどういう人なんだろう。どれくらい、ずれちゃってるんだろう。
◎会って話を、聞いてみたいよ。
◎ねえ岸政彦さん、あなたならどうしますか(『断片的なものの社会学』を読んでから、筆者である岸さんに心の中でいろいろと呼びかけている)
◎ゲーム実況者のレトルトさん、かわいい。きょう帰ったら実況動画見よ。
◎きょうこそは、ブログ書こう……。
◎きょうこそは、コレクション展の勉強しよう……。
でもいちばん考えているのは、
◎わたしが世界一うつくしくて世界一知能が高くて、だれよりも話術にたけていたら……
ってこと。
この妄想楽しいし止まらないけれど、我に返る度、現実の自分との落差にショックを受けるし、自分自身に対しても「いまのままじゃダメ!」って烙印を押すようで、なかなかエネルギー削り取ってく。
べつにいまの自分だって、意見を述べてもいいし、好きなひとに近づいてもいいし、うつくしいドレスを着たっていい。甘いお菓子のことを、「スイーツ」って呼んでいい。
いいんだよ。
レトルトさんは、この動画をきっかけにはまったよ。等身大の兄さんっぷりがすごく好きです。飽きやすいわたしなのに、もう半年以上好きです。あはは。