偶然日記

いまのテーマは一対一の人間関係。

月とわたしの関係

月を見上げながら歩く、月がついてくる

寒くて頬の毛穴がきゅうっと縮まっているのを感じるような、冬の夜

ぽうっと広げた口に紺色の空が流れ込んできて、

月と、わたしだけの関係。

 

そんな夜の散歩が好きだ。

好きだった、中学の頃、高校の頃、

今月のはじめ、中学の頃住んでいた地でひとり、数日暮らした。

お気に入りのコーヒー屋さんができて、21時を過ぎると、そこまで35分かけて、歩いて行った。

みんなが「すぐそこ」まで車を使ってゆくような地。

30分以上あるいて毎晩コーヒー屋さんに行ってると言うと驚かれる地。

 

月がついてきた。

歩いていると、ずっと、月がついてくる。どこまでもずっと。コーヒー屋さんまでずっと。

冬の空は澄んでいる、とひとびとは言う。そうかもしれない。

田舎で、昔からの平屋がずっと並んでいるから、月は隠れることなく、ずっとついてくる。

そうだった。

10代の頃、こうして、月を見上げながら、歩いていた。

24歳になったいま、また月を見上げながら、歩く。

わたしはこの地に住むことになるかもしれない。近い将来。

いや、この地じゃなくても、月がついてくる場所に、住むことになるかもしれない。

そうしたい。

そんなことを思った。

 

それから家に戻って、

きょう、家までの道を一人、月を見上げながら歩いた。

月はついてきていた。

薄い、ヴェールのような雲が濃紺の夜を引きずり、月を隠したり、影を落としたりしていた。

それに合わせて月も、引っ込んだり、顔を出したりする。

雲の動きはヴァリエーションに富んでいて、なめらかだった。

 

夜の散歩は月とわたしだけの関係。

 

顔をあげながら、もうすぐ満ちる月をみつめながら、月に尾行されながら、

月が雲によって姿を消したり、現れたりするその繰り返しをただ見ていると、

いつのまにかわたしと月の間に背の高いヤシの木が表れて、

その結婚式場の前のヤシの木は、顔を上げたわたしの視線の先の月を隠す。

 

そのとき思った。

わたしも月からしたら、

ヤシの木や、ビルや、雲によって、姿を隠したり、現したり、している。

 

わたしも月ではないか、

と閃きのように思った。

 

そしてわたしは月の満ち欠けとじぶんの生理周期が呼応していることを、

ひそかに自慢に思っている。