バイトへゆく。
鍵が閉まっていた。中にいた先輩があけた。
きのうばったりであった友達が言っていたことをおもいだす。
「静かな職場、無音の職場が苦手で・・・・・・」
へえそうかなあ、と思ってきいていたけれど
たしかに、そうかもしれないですね。
先輩と私。
この2名しかおらず、静かな職場、無音の職場だった。
はなしかけてみたが、返事の声がひくくてつめたくて、ショックで黙りこんでしまった。黙り込んでいたら、わるかったとおもったのか、あちらが饒舌になったけれど、立ち直ることができずため息をついてしまった。失礼だっただろうか。
冷たさとか無関心とか悪意とかに敏感なのである。
このところ、人生のテーマは一対一の人間関係。
バイトが早く終わったので、夕方5時前、bunkamuraの「風景画の誕生」展へ。
絶妙な空き加減だった。
5枚の絵が展示されている部屋があるとしたら、そのうち3枚の絵のまえに、それぞれひとりずつ立っている、という感じ。
館内を歩きながら、一貫性のある世界の中に引きこまれるのだけど、でていったら忘れちゃった。お腹が空いていたからかな。印象に残ったのは、曇り空に浮かんだうお座の象徴(ばってんに並べた二匹のさかな)、水を飲んでいる羊のうっとり顔。
あ、外のお店で赤瀬川原平の『世の中は偶然に満ちている』を購入。
死後発見された、原平が30数年かきためていた「偶然日記」の書籍化。
原平はその日起きた「偶然」やその日みた「夢」を書き記し、「偶然日記」となづけていた。
そういえばそんなこと、原平さん言ってたな。『異次元が漏れる』のなかで。
このブログの名前が「偶然日記」なのって、しらずしらずの原平さんの影響か。
偶然。
そのあとはマメヒコへ。
どのテーブルにもランタンが灯っていて、地下室の礼拝堂みたい。
レアチーズケーキとカフェオレ。
レアチーズケーキはクッキー生地の上に、かたちのないやわらかいレアチーズを「ぼてっ」「ぼてっ」「ぼでっ」と3回落としたような姿で、たいへんおいしかった。
あんまり居心地がよくて、『個人的な体験』よみながら、二時間くらいいてしまった。
礼拝堂の空気をまとったおかげで、そのあとの満員電車でもうっとりとしていられた。
帰ってからもうっとりしていた。
母がコメダ珈琲のプリペイドカード3000円分を、わたしに贈るという。「コメダのコーヒーで、卒制がんばってね」と、メールにあった。
わたしがコメダ珈琲で小説を書いていることを知っているのは、母だけだろう。
ありがたい。